第20回 易疲労性

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脳外科医から見た高次脳機能障害 特別寄稿

岩田記念診療所医師
大阪市立大学脳神経外科非常勤講師
安井 敏裕

第20回 易疲労性

2014.04.23

 2014年3月に「高次脳機能障がい支援ハンドブック(大阪府障がい者自立支援協議会 平成26年3月発行)」が診療所へ送られてきたので読んでみました。高次脳機能障害者とそのご家族、関係者の方々の困りごとの解消や、より充実した生活に寄与できることを願って、平易な言葉で分かりやすく書かれています。症状に関しては平成18年に示された高次脳機能障害の診断基準に沿って、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害を中心に説明されています。読んでみて少し気になったのは、「その他の症状」として、「疲れやすさ」、すなわち「易疲労性」が挙げられていることです。私の経験では高次脳機能障害の方々は、ほぼ全例が、「元気だったころに比べて何倍も疲れやすい」とおっしゃいます。すなわち、患者さんが訴えられる頻度の点では「易疲労性」は「その他の症状」ではなく、「主たる症状」のような気がしております。疲れると、たとえば集中力が衰え、ものが覚えにくくなり、イライラするという症状にもつながっていきます。「易疲労性」関連して気をつけなければならないのは、本人が気づいていなことがある点です。このような場合には、周囲が疲れのサインを指摘することが重要です。すなわち、こまめに休息を取ったり、あらかじめ疲れに配慮した活動のスケジュールを立てたりして対応する必要があります。また、周囲からは「やる気がない」など意欲の問題や努力不足と勘違いされていることもありますので、周囲の理解が必須です。

 「疲労」というのは医学的には、痛み、発熱などと同様に、体の異常を知らせる信号の一つで、休息を取れというサインと考えてよいと思います。ただし、現在、疲労の程度は血液や尿を調べても分からないですから、いかに「疲労」を客観的に評価するのかが問題です。「疲労」は種々の原因でおこりますが、高次脳機能障害者の場合には、本来ならば数百億個あるはずの脳細胞の相当数が損傷しているため、日々、眼や耳から大量に脳に入ってくる情報の処理が追いつかなくなり、脳が疲れるのであると想像されています。客観的な検査でとらえがたい「疲労」ですが、最近(2014年4月)、「疲労」を客観的に診断する上で有用な研究報告がありました。社会生活が送れないほどの疲労が半年以上続く、原因不明の慢性疲労症候群(CFS)という病気がありますが、その患者さんの脳を陽電子放射断層撮影(PET)で撮影した結果の発表です。それによりますと、脳深部の認知機能や記憶や痛覚に関する複数の場所で異常が見つかったということです。「疲労感」と脳の特定の場所の異常がPETという客観的な方法で結びつけられたことになります。今は、高次脳機能障害の診断において、「器質的病変」の証明のためにMRIやCTスキャンが行われていますが、将来的にはPETを組み合わせれば、MRIやCTでは見つけられない器質的脳病変の存在を証明できるようになるかも知れません。